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佐藤竹善ソロ RELEASE 佐藤竹善ライブアルバム「Rockin' It Jazz Orchestra Live in 大阪(Osaka) 〜Cornerstones 7〜」のライナーノーツ&収録曲のオリジナル曲を集めたプレイリスト公開!

佐藤竹善ライブアルバム「Rockin' It Jazz Orchestra Live in 大阪(Osaka) 〜Cornerstones 7〜」のライナーノーツを、SING LIKE TALKINGオフィシャルサイトで限定公開しました。

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佐藤竹善の人気カバー・シリーズ『Cornerstones』の第7作は、20191228日に大阪オリックス劇場で行われた、ビッグバンドとの共演によるライブの模様を収めたライブ・アルバムだ。ただし、ビッグバンドとの共演とは言っても、耳馴染みの曲を穏当なアレンジで歌うボーカル集のような内容ではない。

このシリーズの前作『Cornerstones 6』を思い出してほしい。オーケストラとの共演を、単に楽曲をドラマティックに聴かせる手法に終わらせるのではなく、楽曲をより立体的に聴かせるためにその出自を遡り、クラシック音楽の教養とロック/ポップスのイディオムを縦横に駆使してオリジナルな表現に昇華し音楽の豊かさを伝えたその作品を「My Symphonic Visions」と名付けたのと同様に、ここでも独自のビジョンに基づく選曲とアレンジで、懐深いビッグバンド・サウンドの魅力を存分に引き出している。

このアルバムに取り上げられているデューク・エリントンの名曲に倣えば、佐藤竹善はこう言うかもしれない。

It Don’t Mean A Thing, If It Ain’t Got That Vision.

では、ここで構想されたビジョンとはどんなものなのか?

 

佐藤がビッグバンドでやってみたいという思いを最初に抱いたのは、小曽根真のビッグバンドNo Name Horsesと共演した頃だというから、もう15年ほど前のことになる。もちろん、リスナーとしてはもっと以前からビッグバンドのサウンドに惹かれるところがあったというが、やはり「聴いて楽しい」と「自分で納得できるものを作ることができる」との間には深くて長い河が流れている。そのを飛び越えるためには、ビッグバンドに参加してくれるジャズ・ミュージシャンたちと対等に話せるだけの、様々な音楽に対する豊かな知識と経験が必要だと彼は考えた。というのも、彼は最初からビッグバンドで普通にジャズ音楽をやるつもりがなかったからだ。ただビッグバンドの演奏に乗っかってジャズのスタンダード曲を歌うようなプロジェクトなら、自分よりももっとふさわしいシンガーが他にいるだろう。ポップスのシンガーである自分が、腕利きジャズメンを編成したビッグバンドと共演するなら、彼らの誇りと経験、そしてそこから生み出される演奏と自分が持ち合わせているポップスの素養やボーカリストとしての技術が合わさった表現、その双方が拮抗した成果としてジャンルの垣根を越えてより広いフィールドに飛び出していくような音楽であるべきだ。簡単に言えば、ポップ好きの人にもジャズの凄さが伝わり、ジャズ好き、ビッグバンド好き人にもロック/ポップスにこんないい曲があるんだなと思わせられるようなものにしたい。あるいは、そうでなければならない。彼がビッグバンドとの共演を考えた時、思い描いた音楽のイメージはそういうものだった。

 

そうしたビジョンを心の内に温めながら、彼は様々なジャズ・ミュージシャンとライブで共演を重ね、また自身の作品やSING LIKE TALKINGのレコーディングに招いて、音楽的なコミュニケーションを深めていく。例えば、SING LIKE TALKINGの音楽のマニアックなファンならば、2016年にリリースされたシングル「風が吹いた日」のカップリング曲「Hysterical Parade」でフリーキーなトロンボーン・ソロを披露している中川英二郎の名前を記憶している人もいるだろう。彼は、今回のビッグバンドにも参加し、「Lover, Come Back To Me」ではトロンボーン・クワイアーの一員としてスリリングな演奏を聴かせている。

機が熟してきたことを感じていた時期にスタッフからビッグバンドとのレコーディングを提案された佐藤は、そのタイミングを捉えて胸の内にあったビジョンを具体化するための人選と選曲を進め、さらにはレコーディングからライブまでを一つのプロジェクトとする考え方で予算やスケジュールなど現実的なハードルも乗り越えてみせた。

 

今回のビッグバンドのリーダーとしてすべてのアレンジを担当し、プレイヤーとしても例えば「Birdland」の終盤で空を舞うようなハイノートのトランペット・ソロを聴かせているエリック・ミヤシロは、中川と同様にNo Name Horsesでの共演を通して知り合った仲だが、いろいろな意味で彼をキャスティングしたことこそがこのプロジェクトを成功に導いた一番のポイントだったと言っていいだろう。まず第一に、ミヤシロはバディ・リッチ、ウディ・ハーマンなどのビッグバンドに22歳でリードトランペットとして招かれて以来のプレイヤーとしての経験と知識、そしてアメリカでも日本でも自らビッグバンドを編成して活動してきたバンド・リーダーとしての経験と知識をたっぷり持ち合わせていたこと。第二に、彼はフランク・シナトラやサラ・ヴォーン、ナンシー・ウィルソン、トニー・ベネットといったジャズ界のビッグネームだけでなく、マイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダー、さらにはポール・アンカ、トム・ジョーンズといった様々なジャンルの歌の演奏を務めてきたこと。第三の理由は、彼が佐藤と同い歳で、10代の頃の音楽体験に重なる部分が多かったこと。そして何よりも重要なポイントは、彼がメロディこそ一番大事な音楽の要素だと考える音楽家であるということだ。だから、ここに収められた曲たちは、それぞれに斬新なアレンジが施されていながら、決してオリジナルの魅力を失っていない。そのことが、ジャンルの枠組みを超えて音楽としての魅力をジャズ・ファンにもロック/ポップスのファンにも伝えようとした佐藤のビジョンを実現するのに大きな役割を果たしている。

 

もっとも、「独自のビジョン」や「斬新なアレンジ」だけで、人が感動するわけではない。そのことは、このアルバムを聴き通して言葉にし難い感動を味わったなら、すぐにピンとくるだろう。さて、このアルバムの何がこんなに豊かな気持ちにさせてくれるのだろうか?

 

例えば、数々の「新しい音」を生み出してジャズ界の最も偉大なオリジネイターとして知られるセロニアス・モンクは「新しい音」について、こんなふうに語っている。

It can’t be any new note.

When you look at the keyboard, all the notes are there already.

But if you mean a note enough, it will sound different.

You got to pick the notes you really mean!

(新しい音なんてものは無い。ピアノの鍵盤を見れば、そこにもう全ての音がある。でも、もしあなたが一つの音に十分意味を込めたなら、それは違って聞こえるだろう。大事なのは、しっかり意味を込めることさ)

 

言うまでもなく、このアルバムに十二分な意味を込めたのは佐藤のボーカルだ。もう少し正確に言えば、佐藤のボーカルに込められた情熱と喜びだ。伝えたいという情熱とビッグバンドの素晴らしい演奏に乗って歌うことの喜び。それが大きなバイブレーションを引き起こし、聴く人の気持ちの深い部分を揺り動かす。

極上のボーカル・アルバムとはそういうものだろう。そして、そういうアルバムが、ここに届けられた。

 

佐藤竹善の人気カバー・シリーズ『Cornerstones』の第7作は、極上のボーカル・アルバムだ。

written by  兼田達矢

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さらに2020年4月22日~配信スタートになる、佐藤竹善がビッグバンドと共演したカバー・ライブアルバム「Rockin' It Jazz Orchestra Live in 大阪(Osaka) 〜Cornerstones 7〜」収録曲のオリジナル曲を集めたプレイリストをSpotifyにて公開しました。

《プレイリストタイトル》

佐藤竹善ライブアルバム「Rockin' It Jazz Orchestra Live in 大阪(Osaka) 〜Cornerstones 7〜」Original Song

《リンク》
https://open.spotify.com/playlist/66qH18itR58GB45oO8cT6u?si=CH42aj0mSwueLN_8MHpmSg

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シングライクトーキングスタッフTwitter https://twitter.com/singlikestaff にて「Rockin' It Jazz Orchestra Live in 大阪(Osaka) 〜Cornerstones 7〜」リリースのPR動画を投稿しました。

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