【スペシャル・インタビュー】SALT&SUGAR

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30周年を迎えたSALT&SUGARが記念のアルバム・リリースに先駆けて3月にスタートさせたクラブ・ツアーは、全国をまわって5月4日にビルボードライブ横浜でファイナルを迎えた。初夏の日差しと吹き抜ける風がなんとも心地よかったこの日の横浜をそぞろ歩くなら「きっとこんな感じになるよね」というテンポで聴かせた1曲目、ナット・キング・コールの「ザ・コンチネンタル」から始まって、二人の演奏は颯爽と、しかも表情豊かに、洋邦の名曲たちを彼らだけのオリジナルな世界に昇華してみせた。確かな技術に裏打ちされた歌とピアノはしかし、テクニカルな凄さよりも自分たちが奏でる音を彼ら自身が楽しんでいる高揚感にオーディエンスの気持ちを同期させ、その世界に引き込んでいく求心力が圧倒的で、だから会場はたちまち親密な空気に包まれたのだった。



その終演後に行われたインタビューも、まずは彼らがライブに臨むマインドセットはどんな具合なのか聞くことから始めてみよう。
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佐藤:自然に、その日の天気も会場も、お客さんの顔つきとか全部含めて始まりますよね。こうしようと思って始まることはないんですけどね。ピアノの音が出た瞬間、一声出た瞬間に、方向が決まるという。
塩谷:その意味ではジャズに近い精神性というか。自由であるっていうのは、前回と違うことをするのが自由だってことでもなくて、その時に本当に感じることをやるという意味での自由。だから、毎回同じかもしれない。同じでも全然いいんです。それはもう人間なので。その時の感じ、それにフィットした時にいい音楽が生まれるんじゃないかなっていう考え方。それは非常にジャズに近いと思いますね。
佐藤:表現しようというよりは、お互いが反応し合って、結果、表現になってる。そんな感じですかね。
ーーそれは30年の積み重ねの賜物でもあると思うんですが、その間ずっとそれぞれの様々な活動もあって、それでもこのユニットが続いたのはどういうところに理由があったと思われますか。
塩谷:それはやっぱりイベントが大きいですよね。デビュー当時から大阪での竹善プロデュース「Cross Your Fingers」と僕は東京でのソルトプロデュース「Saltish Night」をやらせてもらってたから。だから、盆暮れの里帰りじゃないですけど(笑)、年に2回は必ず大きな会場で一緒に演奏してきたんです。それがなかったら、こういうことにはならなかったかもしれないですね。
佐藤:そのイベント自体が楽しいし、いろんな人たちと知り合えるっていう。だから、プラットフォーム的な感じでそのイベントがあって、SALT&SUGARのステージもそのなかで必ずやるわけです。そういう感じで毎年やっているうちに、SALT&SUGARというものが、独立していろんな人たちのなかで存在感を持つようになってきたんですよ。ライブをやってみたらお客さんも喜んでくれてとか…。しかも、好きなことをやっている上でお客さんが入ってくれてるので。入ってもらうために何をやるかじゃなくて、2人で楽しんでやっていることにお客さんも来てくれるようにどんどんなっていったので、本当に理想的だなと思いますね。
塩谷:それに、立ち止まってないっていうのが僕のなかでは1番大きくて…。イベントをやってて、僕のなかでは中だるみしたような時期があったんですよ。だけど、竹善は一緒に演奏すると成長してたりするし、僕もいろんな経験をして違うように感じてくれてるというのがずっと続いて、だからマンネリ化しないのが面白くて。イベントでは若い人から大御所の人たちまでいろんな人と共演して、そのたびに刺激を受けるわけですけど、その誰とも違う関係性がSALT&SUGARにはあって、演奏すると「やっぱりこれだよね」みたいな感じをお互いに感じるし、聴いてる人にも同じような感じでだんだん定着してきたっていう感じですね。
ーーさて、今回のツアーのライブ音源も含めたアルバムが出ます。タイトルは『Still The Same』。これはどんなふうに決まったんですか。
佐藤:「変わらず、でも変化し続ける」というようなフレーズがないか?とチャットGPTに聞いたんです(笑)。
――(笑)、2026年的な進め方ですね。
佐藤:そしたらいくつか出てきたんですけど、英語って、ならではの、影に潜むニュアンスがすごくあるから、それをさらに突き詰めていって、そのなかで「Still The Same」というのが一番ね。Keep Goingでもない、その3つの単語が並んだときに醸し出すニュアンスがあるなって。
ーーstillもtheもsameも多分、中学校で習う単語だと思いますが、それが3つ重なると英語ならではの奥行きが出てくるというのは、SALT&SUGARの音楽が音は2つしか鳴ってないのに、この2人だとすごく奥行きがあるというのと相応していますね。
佐藤:そこまでは考えなかったですけど(笑)。もっと聞いたことがない単語で表現することもできるんですけど、StillもTheもSameも、ごくごく身近な言葉じゃないですか。身近な言葉で実は…っていうのをタイトルで表現したかったんですよね。
ーーなるほど。そのアルバムには「Everything Pops」というオリジナルの新曲も収録されます。
塩谷:新曲を作るなら、“ここは竹善さんでしょ”と僕は思ったんですけど、「ここはソルトでしょ」と返されて…。
佐藤:もう30年キャリアもあるので、SALT&SUGARの総本山的な感じをドーンと感じさせる曲を、と思って。シングルというと、まずパイロットというイメージがあるじゃないですか。わかりやすい入り口としてっていう。それは一応守ってきたんです。だから、J-POP的なアプローチの曲をずっと出してきたんですが、SALT&SUGARのキャリアも積み重なって、ジャズセッション的なイメージも定着してきたので、もはや、そういう感じの表現でシングルを出しても、おおっ!となるんじゃないかなと。
――すでに「入り口」を通り抜けた人はたくさんいますからね。
佐藤:それに、今の若い人たちはもうジャズもロックも関係ないので。すごいとかカッコいいと思ったらもう、それはカッコいいということになるし、若い世代のアーティストの曲は昔のJ-POPに比べたら大変複雑で、若いリスナーも難しくてわけがわからない感じがするほど興味を持つっていう。そういうなかで、僕らがこういうことをやったら面白いんじゃないかなと思ったというのもあります。そういう、いろんな観点から考えてソルトに書いてもらうことにしたら、予想以上にすごい曲を書いてきたんですけど(笑)。
――「これぞ総本山という曲を」というオーダーは大変ですよね?
塩谷:そうなんですよ! だけど、いいヒントになったのは、ボビー・マクファーリンとチック・コリアの「スペイン」とか、インスト的なリフがあって、それを歌にしちゃったみたいな。そういうのが面白いなというのは、SALT&SUGARの1つのトピックスでもあったと思うんですよね。そういうのを作ろうと思って。ただ、最初ラテンじゃない曲を考えてたんだけど、どうしてもラテンになっていっちゃったんです。でも、それを英語の詞で竹善が歌うとなったら、いわゆるラテンの曲にはならないはずだから。ある種のミスマッチ感っていうかね、それがまた面白いかもしれないと思って。
ーー今の話からすると、歌詞が英語というのは先に決まっていたんですか。
塩谷:そうなんです。これをスペイン語でやっちゃうと普通になっちゃうっていうか、いわゆるラテンに聞こえると思うんですけど、英語で竹善が歌うということによって、SALT&SUGARならではの新しい曲になるんじゃないかなって。実際そうなったと思いますよ。
ーーその歌詞の内容に関して、竹善さんが言われた「総本山みたいな曲」という話がすごく腑に落ちたのは、♪One Touch and Everything Pops♪という決めのフレーズがまさにSALT&SUGARの音楽を言い当てていると思ったんです。そういうことを書いてほしいとオーダーしたんですか。
佐藤:全然、そんなことはないです。でも、キャピ(作詞担当のDr.Capital)は僕らのイベントにも1回出てくれたし、SALT&SUGARを好きで聴いてくれていたので、僕らがどういう感じの幅広さでやっているか知ってるんです。一応、恋愛の曲ですが、SALT&SUGARの自由さというか、いろいろやっても結局ここに落ち着くよね的な感じの歌詞になってますよね。
塩谷:その歌詞の“pops”というのがね、キャピの解説だと、音楽のポップスという意味もあるし、弾けるという意味もある、と。ワンタッチしたらもう弾けちゃって、別世界に変わるっていう。それがすごくいいなと思って。音楽のマジックもそういう感じだと僕は思うんです。ホントに、一つの音のニュアンスで世界観が全部ガラッと変わっちゃう。それはもうピアニストとして十分痛感してるわけなんですけど、人間関係もそうなのかもしれないと思うと、すごくいい歌詞だなと思って。もちろん、ジャンルとしてのポップスという意味もすごく含まれてるんですよ。僕は、いい音楽を、より多くの人に聴いてほしいんです。それって、つまりポップスじゃないですか。僕らの活動をめちゃくちゃいいと思ってくれる人はいっぱいいるけれど、もっと知ってほしいなという思いはずっとあるので、そういう思いにも通じてる歌詞だと思うんですよ。だから、すごく30周年にふさわしい曲だなと思っています。
ーーアルバムのリリース後には、ホール・ツアーが始まります。どんな感じで臨むことになりそうですか。
佐藤:ホールだから、クラブだからっていう感じで、だんだんやらなくなってきましたよね。ただ自然に、その場所の空気で変化するという感じだと思いますよ。
塩谷:とりあえず、ホールのほうがワンセットの曲数が多いと言えば多いですね。
――では、無数のレパートリーの中からどんなセットリストになるか。そこが1番の楽しみになりますね。
佐藤:新しいのも選びたいし、久しぶりの曲も選びたいし。30年やってきたんだなというようなことをお客さんも感じたいでしょうけど、新鮮さも新しい曲でしっかり出しつつ、という感じですね。
ーー最後に、今後の展望も聞かせてください。
佐藤:幸い、こういうユニットなので、70歳になっても80歳になってもできると思うんですよ。その時々にどういう感じになるのかなっていうのが僕ら自身もすごく楽しみですよね。
塩谷:佐藤竹善は体が強いので全然大丈夫でしょ。
佐藤:ピアノもね、どういう表現になっていくのか…。
塩谷:指は動かなくなってくるでしょうから、もっと渋い感じになるのかもしんないし。何十年後かには、きんさん、ぎんさん、みたいに、「はじめまして」なんて言って演奏を始めるとか…。「あなた、歌、上手いね」とか言いながら(笑)。でも、想像力とかワクワクする気持ちとか、そういうものは持ち続けたいし。そのためにはやっぱり日々成長していないといけないですけど、どんどん頑固になっていくし、頭が硬くなってきてるなともうすでに思ってるので、いろいろなものをちゃんと受け入れられる柔軟性、それは持ち続けたいと思ってます。
佐藤:歳を取ると、経験も増える分、既成概念に落ち着いて来がちじゃないですか。でも、それって意外に悪いことじゃないなと思うところもあって。それなら“既成概念を壊したほうがいいよな、壊したいな”とか、“普通だったらこうするけど、奇を衒うじゃなく壊すってどうする?”とか。そういうことをやってると、豊富な経験の上での若い頃には思いつかないようなメロディーが出てくるんですよ。それが年齢を重ねた上での若々しさじゃないかなと思ってきてます。
ーーそういう「年齢を重ねた上での若々しさ」を予感させるようなツアーになることを期待しています。どうもありがとうございました。

アルバム「Still The Same ~30years on~」
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